【楽曲解説】フレデリック『light』MVや歌詞の意味は?未来を見据え、攻めた新境地

※仕事で山場があり、久しぶりの更新になってしまいました。。。

 

さて、11月16日からフレデリックの新曲『light』の配信がスタートしました。

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(左から、赤頭隆児(Gt)・三原康司(Ba)・三原健司(Vo/Gt)・高橋武(Dr)。)

 

印象的なMVやこれまでの彼らの楽曲のイメージと違った仕上がりに、リリース2日で早くも話題沸騰しています。

これまでの彼らの楽曲と比べて、『light』は何が新しいのか?フレデリックはどんな想いでこの曲をリリースしたのか?

 

今日は、MVや歌詞、音作りの解説に加えて、彼らが楽曲に込めた想いの部分にもスポットを当てて書いていきたいと思います。

 

フレデリック『light』のリリース情報はこちら

frederic-official.com

 

1. 楽曲について

まず、『light』は11月16日(金)に、配信限定でリリースされました。
iTunesや、一部音楽配信サイトでダウンロードできます。

また、YouTubeでMVも見ることができます。

 

www.youtube.com

 

2. テーマ性の強いMVは南アフリカヨハネスブルクで撮影

 上記のリンクを見るとすぐお気づきになるかと思いますが、『light』のMVはこれまでのフレデリックの楽曲のそれとは一線を画したものになっています。

 

これまでは、メンバー4人の演奏シーン+印象的なキャストを使ったダンスシーンで構成されたものが中心でした。思わずマネしたくなる振付け含め、「踊れるロックを印象付ける」「ライブの場で楽しく踊れる準備ができる」といった役割をMVに持たせていたと思います。

 

・『オドループ』MV

フレデリック「オドループ」Music Video | Frederic "oddloop" - YouTube

 

・『オワラセナイト』MV

フレデリック 「オワラセナイト」 Music Video | Frederic"OWARASE NIGHT" - YouTube

 

・『オンリーワンダー』MV

フレデリック「オンリーワンダー」MusicVideo / frederic“ONLYWONDER” - YouTube

 

一方で、今回は本人の登場シーンはほんの一瞬で、大部分はダンスシーンが中心。東京と南アフリカヨハネスブルクで撮影を行っており、「ダイバーシティ」や「ボーダーレス」を表現するなど、映像におけるテーマ性を非常に重視した仕上がりになっています。

 

"メディアも企業も政治家もダイバーシティの必要性を声高に叫ぶ一方で、トランプイズムが世界中に蔓延していく、そんな世の中で「真のダンスミュージックはトライブも、人種も、国境も、あらゆる人々の境目を超えていく」といったことがテーマになっているという。"

"【渡邉直監督 コメント】

文化の垣根を越えたことで、心の中にある光の本質を描くことができた。言語ではなくて音楽だからこそ越えられたし、ダンスだから越えられた。楽曲の良さを最高レベルに引き出すことができたと思います。今後もっと日本の音楽が国内だけに留まらず海を渡って欲しいし、どんどん高みを目指せる環境になっていくことを願っております。"

フレデリック、時空を超えて東京とヨハネスブルグがダンスで繋がる“LIGHT”のMV公開 (2018/11/15) 邦楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

 

3. メッセージ性の強いシンプルな歌詞

ここで、歌詞についても見ていきましょう。 

 

▼歌詞

フレデリック『light』

詞・曲:三原康司

 

FLASHBACK LIGHT 思い出して 心に灯(あかり)を

 

あなたは正しい  表と裏を持ち合わせてるから

そんな見窄(みずぼ)らしい 怒りの影は落とさずに

ヒカリ テラセ イマ

FLASH もう止められない

 

FLASHBACK LIGHT 思い出して 心に灯(あかり)を

 

輝くほどに影はそばで深くなっていくんだから

決める選択肢 今しか描けないドラマに

 

ヒカリ テラセ イマ

FLASH もう止められない

 

FLASHBACK LIGHT 思い出して 心に灯(あかり)を

 

Give it up for you light

To light

 

光を 姿を 夜の隙間に歌う歌を

光を 形を なぁ 君の暗闇を そっと照らして

 

Give it up for you light

 

FLASHBACK LIGHT 思い出して 心に灯を

 

FLASHBACK LIGHT

 【1】1番

 FLASHBACK LIGHT 思い出して 心に灯(あかり)を

冒頭は「FLASHBACK LIGHT」というフレーズから始まりますが、このことばが曲を通じてのキーメッセージとなっています。

この"light"は「心に灯を」といっているように、物理的な光ではなく、心の中で灯す希望を指しています。

 

あなたは正しい  表と裏を持ち合わせてるから

そんな見窄(みずぼ)らしい 怒りの影は落とさずに

ヒカリ テラセ イマ

FLASH もう止められない

 人間は人に見せられる、明るい"表"と、決して誰にも打ち明けられない"裏"の面を持っています。誰しも二面性があって当たり前だから、それを持っている"あなたは正しい"のでしょう。

"見窄(みずぼ)らしい"は外見が粗末なことを言いますが、思わず怒りの影ばかり見せていると見え方が悪くなってしまいます。

光と影、どちらもあることは受け入れたうえで、光のほうに意識を向けようよ、と歌っています。

 

 【2】2番

 輝くほどに影はそばで深くなっていくんだから

決める選択肢 今しか描けないドラマに

 繰り返しが多い中で、この部分も印象的なフレーズですね。光と影は合わせ鏡で、光を求めれば影が付くことは避けられない。かつ、より明るい方へ向かうとその濃淡はよりくっきりとします。

その中で、今しか描けないドラマ(=光)を進む道として選びたい、という意志を感じます。

 

人間は誰しも二面性があり、光があれば影もある。その中で、光の方へ向かっていこうというワンメッセージをシンプルに歌い上げる楽曲です。

 

4. 『light』はこれまでのフレデリックと何が違うのか?

さて、ここまでMVや歌詞を見てきましたが、ここからが本題です。タイトルの通り、今回の新曲『light』の新しさや聴きどころを、過去の彼らの楽曲と対比して整理してみたいと思います。

 

色々な観点から語れると思いますが、今回は①サウンド・②歌詞・③コンセプト、の3点で説明していきます!

 

 サウンド

 YouTubeのコメント欄の反応にもある通り、『light』はEDMの要素が強い音作りになっています。これは、これまでのフレデリックにはなかった新たな試みです。

 

『light』では、メロディの骨組みや展開は大半がシンセサイザーや打ち込みになっています。これまでも打ち込み自体は用いられていたのですが、ギターリフが主体のメロディ構成になっていたのに対して、今回は完全に電子音が主体になっています。

 

またBPMも、これまで踊れる要素が強い楽曲としてリリースされたものと比べるとテンポがゆったりめな印象です。EDMのBPMがだいたい128程度といわれますが、『light』は125~126程度。そういった意味でも、EDMに忠実ですね。

フレデリックは11月20日に、LINELIVEで「LIGHT LIVE♩=120~140」という企画の実施を予定しています。『light』においては、それだけこのBPM126のテンポが重要になっているということの証なのではないでしょうか)

 

また、メロディにおいても、Aメロ→Bメロ→サビの繰り返しの構成になってはいますが、サビにおけるフレーズの反復の印象はいつもほど強くありません。

(例えば、『リリリピート』の「リピートして リピートして リピートステップして」や、『TOGENKYO』の「桃源郷 待って 待ってほら 桃源郷 待って 待って」などがここでいう反復の例になります。)

このリピート感で「フレーズが印象に残り、癖になる」というのがフレデリックの中毒性な気がしますが、『light』はそれと比べると非常にあっさりとしており、中毒性よりも「ノれる」要素のほうが強く感じます。

 

 ②歌詞

 前に書いたフレーズの反復とも重なりますが、意味が良く分からないけど記憶に残るいつもの「独特の引っ掛かり」はそれほどありません。

また『トウメイニンゲン』や『まちがいさがしの国』のような風刺ではなく、聴き手へワンメッセージを非常にシンプルな言葉で伝えています。

 

※ちなみに、自分が印象に残っている引っ掛かりで言うと、例えば以下のような感じです。

『オワラセナイト』-「終電感情線外回りに間に合わないよ」

SPAM生活』-「死んだサカナのような眼をしたサカナのような生き方はしない」

『ディスコプール』-「涙のプールサイドは走るな」

 

 ③コンセプト

 楽曲における「コンセプト」色が強いのも、この曲の新しさだと思います。

フレデリックは、(彼らが「フレデリズム」というように)「リズムの共有、体感温度の共有」を特に大事にしているバンドだと思います。だからライブに行くと、猛烈に踊るわけではないのに不思議とリズムで皆が一体になれる。これまではそのフレデリズムを聴き手が感じられるための音作り・言葉選びが主体の楽曲が多かったと思います。

一方で『light』は、「トライブも、人種も、国境も越えて」皆が一体になるという非常に壮大なコンセプトに挑戦しています。おそらく、ここまではっきりと「コンセプト」を立てた楽曲はこれまでの彼らにはなかったと思います。だからこそ、彼らの得意技をある意味"封印"して、それを成し遂げるための表現方法に振った楽曲になっていると感じました。

 

5. 守りに入らなかったフレデリックの試みを応援したい

今回のリリースに当たって、作詞・作曲をしたベースの三原康司はこんな風にコメントしています。

 

フレデリックのダンスミュージックの一つのスタイル「LIGHT」

賛否両論がある楽曲だと思う、声にしてくれて事自体が嬉しいからありがとうございます☺︎
1番嫌なのは無関心だから

今回は攻めたかったんよな、うん

まぁアルバムを聴いてくれてる人は気付いてるはず色んなタイプの曲がフレデリックにはあってその1つ

より攻めましたぜ
攻めると責める人もいるけど攻めなくてどうすんだよって思うよな!

自分たちの面白いを証明する為の対価はたくさんあるし今でも身に沁みて感じてる
人間だから

ステージが大きくなればなるほどスポットライトを浴びるその分影の部分も大きくなってくる
何を選ぶか

だから俺らは面白い方に一歩踏み出しました
一歩踏み出さないとなにも始まんないから
勇気もいるけど自信があったからな

そして実際に生まれたものは作品としてボーダーレスな音楽

境界線をなくせるのはやっぱり音楽でした

明暗を持ち合わせてるのは当たり前のこと
どちらも大事に良い部分も悪い部分も素直に照らしてこう

もしそれでもダメな日があってもさ
今回の曲を聴いてみて

この曲やMVには理想のあるべき姿がある
人が繋がる光景は文面だけじゃ伝わらないくらい綺麗なんや

イメージがあれば変わっていける
ネガティヴからクリエイティヴは生まれない
イメージを生むのだFLASH!! 今フレデリックがこういう音楽を面白いなって思う前を向いた形がLIGHT

そんな新境地な曲が生まれました。

https://www.instagram.com/p/BqTsReRA6Fi/

 

このコメントからも、この曲がこれまでのフレデリックにとっての正攻法ではないということを、メンバー自身が認識していること、そして挑戦せずにどうするとあえて振りにいった覚悟が伝わってきます。

さらに、そんな勝負を仕掛けた楽曲で、"国境も価値観も超える「音楽の力」を信じている"というスケールの大きなコンセプトを掲げているのも、とびきりチャレンジングです。

 

フレデリックも、最初に自分がライブを見た時から着実にファンを増やしている大人気バンドの一つですが、これからの成長がもっと期待されるバンドです。

唯一無二の楽曲センスで評価を受けながら、もっと成長したいとこのタイミングでこういった挑戦に振り切った彼らを、応援したいなと思っています。

まだリリースされたばかりなので、この曲がどんな形で披露されるのかが非常に楽しみですが、是非これからフレデリックを語る上で、重要な一曲になってほしいなと思っています。

 

ライブの演奏、演出含め、非常に楽しみですね!