【楽曲解説】ずっと真夜中でいいのに。「眩しいDNAだけ」の歌詞の意味は?

今日は、ずっと真夜中でいいのに。が2/5に公開した新曲「眩しいDNAだけ」について書いていきたいと思います。


この記事を書いているタイミングが公開1週間後なのですが、既に再生回数は144万回を突破。ジワジワと、しかし着実に人気を集めていることが分かりますね...!
今年ブレイク必至の"ずとまよ"。気になったあなたはこの記事を読んでより「どハマり」しちゃいましょう!

 

1. ずっと真夜中でいいのに。についておさらい

ずっと真夜中でいいのに。については、以前「脳裏上のクラッカー」について書いた記事で紹介しています。

hogaku-rush.hatenablog.com
ここで触れた通り、ずっと真夜中でいいのに。および、ボーカルを務める「ACAね」の存在は引き続き謎のまま。しかし、2019年に入り立て続けにメディアに取り上げられるなど、注目度は高まるばかりです。

 

www.billboard-japan.com

 

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今の時代どんなアーティストでも、ファンはYouTubeをはじめとしたインターネットで最初の接点を持つことが圧倒的に多いはずで、ロックバンドも音楽クリエイターも、聴き手へのアプローチのチャンスは平等にあるともいえます。

 

中でもボカロを中心としたクリエイターの作る音楽は、パソコンを使って作曲しそれを公開するという点でインターネット、YouTubeとの相性が極めて良い。だからこそ、ロック・ボカロ・アニメなどを融合したメロディが特徴的なずっと真夜中でいいのに。は、YouTubeに公開したMVが驚くべきスピードで聴き手に広がっているのではないでしょうか。

 

2. 新曲「眩しいDNAだけ」の歌詞の意味は?

それでは、ここから新曲「眩しいDNAだけ」の歌詞の意味を考えていきたいと思います。

 

▼ずっと真夜中でいいのに。「眩しいDNAだけ」MV

www.youtube.com

 

 ▼歌詞

ずっと真夜中でいいのに。「眩しいDNAだけ」
詞・曲:ACAね

 

工場の煙で止まりますのボタン
知らない所に降りたった途端
ミルクとコンクリートで出来た猫が
私の毒をみて鳴いてくれた
買い物袋から
はみ出たネギに
ポイ捨てされた銀色のトレーナーに
スカスカでとろい脳みそを
不安で満たしても腹減るよ

普段通りの段取り 熟して小慣れて
繰り返して演じるほど
遠ざかるみたい 茹で上がってない
肌に泡を汚すみたい
色が吸えない 味も読めない
孤独が眩しすぎてるほどのDNA
誰も立てないほどの生き映え

まだ迷ってしまうけど 街灯がない道だけど
届かない呼吸だけ 有り余る
このまま反射しても
何も変わりゃしないことも
過ぎって蔓延るよ

今は傷つくことも願ってる
見たことない光を望むなら

犠牲にしたって本心だけ
誰もわからず乏しい罠
分類したって自尊心は もう
薄暗い朝に委ねるだけ
時々たまに従うまま
シナリオ通りに暮らしてゆくなら
悩み方も何も知り得ずに頷くだけ
ビリビリに破り始めるだけ 今なら
今ならなだけ

無駄を楽しむ勇気がなくて
物語るために罵るね
変なところ 正直だって
そっちの方が楽だから
鍵閉め忘れたみたいに君失っても
もう何も悟れないよ
笑って

犠牲にしたって本心だけ
誰もわからず乏しい罠
分類したって自尊心はもう
薄暗い朝に委ねるだけ
時々たまに従うまま
シナリオ通りに暮らしてゆくなら
悩み方も何も知り得ずに頷くだけ
ビリビリに破り始めるだけ 今なら

毎度 決まった縁を
なぞってゆくのこわいよ
繰り返すけれど
繰り返したいけれど
満たされていたくないだけ

既製にしたって本心だけ
誰もわからず乏しい輪奈
分類したって自尊心はもう
薄暗い朝に委ねるだけ
解き怒気たまに従うまま
無難に無害に暗してゆくなら
笑い方も何も知り得ずに頷くだけ
ビリビリに破り始めるだけ
逸らせない光を選ぶだけ
今なら

犠牲にしたって本心だけ


工場の煙で止まりますのボタン
知らない所に降りたった途端
ミルクとコンクリートで出来た猫が
私の毒をみて鳴いてくれた
買い物袋から
はみ出たネギに
ポイ捨てされた銀色のトレーナーに
スカスカでとろい脳みそを
不安で満たしても腹減るよ

 

それでは、ここから具体的に歌詞を見ていきましょう。すでにこの曲の歌詞の内容を解釈したブログが複数あり、過去のMVとの関連性から楽曲を解釈したものもありますが、ここではあえて曲の歌詞のみに注目して、意味を考えていきます。

 

 【1】1番Aメロ

工場の煙で止まりますのボタン
知らない所に降りたった途端
ミルクとコンクリートで出来た猫が
私の毒をみて鳴いてくれた
買い物袋から
はみ出たネギに
ポイ捨てされた銀色のトレーナーに
スカスカでとろい脳みそを
不安で満たしても腹減るよ

曲は情景描写から始まります。歌詞は難解ですが、「毒」「ポイ捨て」「不安」といったネガティブな言葉からどことなく退廃的な雰囲気を感じるかと思います。

歌詞における工夫として、「工場の煙」「ミルク」「コンクリート」「銀色のトレーナー」といったモノトーンの名詞を多く登場させることで、全体的に淀んだ情景をイメージさせていることがあります。

「夕食の材料を買った買い物の帰りに猫に遭遇する」といった平和な日常風景が、「不安」で満たされている状態だと自分は捉えました。

 

このパートで何よりも際立つのは、ACAねのボーカルの多彩さでしょう。低音域の繊細なウィスパーボイスで、聴き手は言葉そのものをストレートに感じることができます。また少し眠そうな、けだるい感じを声色で表現することにも成功していますね。自分の声の持つ良さを分かっていて、1曲の中でもそれを適切に使い分けることができているのが本当にすごいと思います...!

 

余談ですが、最近日本語詞の中にラップを混ぜた楽曲が多い気がします。トレンドなのかもしれませんね。

 

 【2】1番Bメロ

普段通りの段取り 熟して小慣れて
繰り返して演じるほど
遠ざかるみたい 茹で上がってない
肌に泡を汚すみたい
色が吸えない 味も読めない
孤独が眩しすぎてるほどのDNA
誰も立てないほどの生き映え

 Bメロも同じく気だるい感じのメロディが続きます。「熟して小慣れ」るほど「繰り返して演じ」る普段通りのルーティーンは、何度も行ううちに遠ざかり、色も味も分からなくなってしまいます。そういう状況は孤独で、生きているのに生きた心地がしないのではないでしょうか。

 

 【3】1番Cメロ

まだ迷ってしまうけど 街灯がない道だけど
届かない呼吸だけ 有り余る
このまま反射しても
何も変わりゃしないことも
過ぎって蔓延るよ

今は傷つくことも願ってる
見たことない光を望むなら

毎日に光明が見えず、暗い闇の中で迷ってしまうような感覚。そんな中で、呼吸の音だけが有り余るほどはっきりと聞こえます。このままだと何も変わらないから、光を求めていっそ傷ついても構わない、むしろ光が見えるなら傷つきたいと願います。

 

【4】1番サビ

犠牲にしたって本心だけ
誰もわからず乏しい罠
分類したって自尊心は もう
薄暗い朝に委ねるだけ
時々たまに従うまま
シナリオ通りに暮らしてゆくなら
悩み方も何も知り得ずに頷くだけ
ビリビリに破り始めるだけ 今なら
今ならなだけ 

自分に嘘をついて、本心を犠牲にしても、そのことは誰にも分からない。おまけに自尊心にまみれて孤独に朝を迎える(=薄暗い朝に委ねる)ことになります。

誰かの言うことに従い、シナリオ通りに暮らしているのが今のルーティーンの生活だとすれば、その生活には悩みもない代わりに未来もありません。

自分が変わるチャンス、ルーティーンをビリビリに破るタイミングは「今ならなだけ」、つまり今しかないということではないでしょうか。

 

【5】2番Aメロ

無駄を楽しむ勇気がなくて
物語るために罵るね
変なところ 正直だって
そっちの方が楽だから
鍵閉め忘れたみたいに君失っても
もう何も悟れないよ
笑って 

回り道をして「無駄を楽しむ」勇気がなく、口を開けば悪口ばかりを言っている自分。自分に正直すぎて配慮がないとはいえ、そっちの方が楽なのです。「鍵を閉め忘れ」るようにうっかりと君を失っても、そこからはっと何かを悟るようなこともしないのでしょう。

 

【6】2番サビ

犠牲にしたって本心だけ
誰もわからず乏しい罠
分類したって自尊心は もう
薄暗い朝に委ねるだけ
時々たまに従うまま
シナリオ通りに暮らしてゆくなら
悩み方も何も知り得ずに頷くだけ
ビリビリに破り始めるだけ 今なら
今ならなだけ 

 1番からの繰り返しです。

 

【7】Cメロ

毎度 決まった縁を
なぞってゆくのこわいよ
繰り返すけれど
繰り返したいけれど
満たされていたくないだけ 

決まり切ったルートをなぞるだけの毎日を生きている自分。そのことにふと気づき、怖く感じています。つい、安定した毎日を繰り返したくなってしまいますが、それによって満たされたくない(=安易に満足したくない)という相反する気持ちに気づきます。

 

【8】ラスサビ

既製にしたって本心だけ
誰もわからず乏しい輪奈
分類したって自尊心はもう
薄暗い朝に委ねるだけ
解き怒気たまに従うまま
無難に無害に暗してゆくなら
笑い方も何も知り得ずに頷くだけ
ビリビリに破り始めるだけ
逸らせない光を選ぶだけ
今なら

 

犠牲にしたって本心だけ


工場の煙で止まりますのボタン
知らない所に降りたった途端
ミルクとコンクリートで出来た猫が
私の毒をみて鳴いてくれた
買い物袋から
はみ出たネギに
ポイ捨てされた銀色のトレーナーに
スカスカでとろい脳みそを
不安で満たしても腹減るよ

 ラスサビも繰り返しが多いですが、一部1、2番と歌詞の異なる部分があります。特に「シナリオ通りに暮らしてゆくなら」は「無難に無害にくらしてゆくなら」と言い換えられています。特に何の変化もなく無難な生活。それが連綿と続いてゆくことに気づき、急にぞっとするような気持ちを歌っているのではないでしょうか。

 

なんとなく、日々蓋をしている不満足感。気になる道を選ばず、いつも通りのルーティンに落ち着いてしまう自分。そんな自分にはっと気づいた時の何とも言えない恐怖感は、私にもありありとイメージできます。

 

日々生きている以上、身体の中の細胞は生き続けていて、まさしく「眩しいDNA」の状態です。そんな生物学的な営みと反対に、単純なことの繰り返しで心が真っ暗な毎日を生きている姿を、この「眩しいDNAだけ」は歌っているのではないでしょうか。

 

3. まとめ

さて、ずっと真夜中でいいのに。の新曲「眩しいDNAだけ」の歌詞の意味を考えてきましたが、いかがだったでしょうか。

 

この曲は、これまでとはまた違ったイメージをもった楽曲に仕上がっています。1番Aメロで指摘したウィスパー感・けだるさが、後半になって張り上げるような歌い方になっていく構成は、歌詞の中に歌われている想いが徐々に強くなっていくのを巧みに反映しています。

 

また、ベースを筆頭に後半に行くにしたがって音の数が増え、メロディラインが複雑になっていくのも聴き応え十分です。今までより一層バンドサウンドを楽しめる一曲だと言えると思います。

 

YouTubeのコメント欄やTwitterなど、早くも「中毒になった」というコメントが続出している"ずとまよ"の新曲「眩しいDNAだけ」。皆さんも是非、繰り返し聴いてハマってみてください!!^^